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月夜の留守番電話

外国旅行記と小説。

ミュージック・アワー

ポルノグラフィティシングルタイトル800字小説

目覚まし時計を使わなくなったのは、大学生になってからだ。スケジュールもアラームも、iPhoneがあればいい。朝6時半、「ゆらぎ」で目覚めたわたしは、まずPCを起動させて、Spotifyを開く。忙しい朝、少しだけ優雅な気分にさせてくれるプレイリスト。ときどきCMが入るけど、気にはならない。気にするほどの注意を払って音楽を聴くほど、わたしの朝は暇ではない。コーヒーを沸かして、トーストかヨーグルトを食べる。朝食は決して抜かない。これはポリシーと言っていい。朝食を食べる人は、そういうポリシーなのだと思う。漠然と朝食を食べている人なんて、いないと思う。

歯を磨いたりメイクをしたりしている間にも、音楽は流れる。はじめは、洋楽のミックスリストもオシャレだと思っていたけれど、好みじゃない声の歌が流れると落ち着かなくて、Spotifyで流すのはインストだけにしてしまった。

そして、プレイリストがひとつ終わるぐらいのころに、身支度は終わる。ワンルームの姿見を確認、PCをシャットダウン、それからイヤホンを耳に差して、駅に向かう。イヤホンのもう片方はもちろん、iPhoneに差さっている。液晶の右上が少し割れている、わたしのiPhone6sには、お気に入りのセットリストが収まっている。ほとんどは好きなバンドの、ライヴセットリストだ。今日は雨が振りそうだから、4年前に行ったツアーのセトリにしよう。

あのときはまだ大学生だった。英語の授業で知り合った友だちを誘って、一緒に行った。その日は春の嵐で、いつもより張り切ったメイクも、時間をかけたヘアスタイルも、会場最寄り駅の構内を出た瞬間に台無しになった。化粧室の鏡に映るわたしは、グシャグシャだった。ライヴ前だというのに、全然気分が上がらない。なのに彼らがステージに上がったときの照明、そして歓声・・・。

8時4分発、3番線の急行。今日からまた、一週間が始まる。