月夜の留守番電話

外国旅行記と小説。

サボテン

「ねえ~、ヒマ~。この渋滞どうにかなんないの~?」

「野田から東が丘まで10km渋滞だってさ。こりゃしばらくかかるな」

「なんでこんなとこで渋滞するのよ~。ねえ~、ヒマ~、つまんない~」

「イライラすんなよ。ほら、チョコやるからさベイベ」

「べつにイライラはしてないし、てか何、そのベイベっていうの。うわ、てかこのチョコちょっと溶けかかってる、ヤバイって!」

「ティッシュいる?」

「ルール違反、それ。車の中でタバコ吸わないでって言ったじゃん!ゆうた、ほら、消して!窓開けて!」

「テレビに影響されすぎだって。タバコの一本や二本ぐらい大丈夫だよ。大体タバコなんて、ずーっと昔からみんな吸ってきたんだぜ?それをこの何十年かで急に目の敵にしてさ・・・」

「ささ、いいからいいから。あなたの御託はいいですから、ストップ・ザ・タバコ」

「これ最後の一本にするから、わかったからこれだけ吸い終わらせてくれって」

「て言って、その一本が全然吸い終わらないじゃない」

「いやだって、ここまで3時間運転して、挙句の果てにこの渋滞だぜ?タバコぐらい吸わないとやってられない」

「いくみのとこのカレシは、いくみがタバコ嫌だって言ったらすぐやめてくれたって言ってたよ」

「よかったなあ」

「あー、そうじゃなくて!ゆうたも禁煙したら?」

「来年、気が向いたらな。あ、この曲!最近よく聞くよな~」

「・・・」

「な、ありさ」

「・・・」

「催眠術にでもかかったかな?あーわかったよ、ゴメン。もう車でタバコも吸わないし、禁煙のことも前向きに検討するよ」

「よーし、なら許して進ぜよう。ところでさ、私たちの会話、文章でいうところのかぎかっこごとにしりとりしてるの、みんな気付いてるかな?」

「なあ、どうだろう。みんなそんなの気付くほどヒマじゃないんじゃねえの?そんな凝ったことするの、渋滞してる俺らぐらいだよ」

「よっぽどヒマかよっていうね」

「ねみぃ~。お、そろそろ渋滞抜けるぞ、このしりとりもビシッと終わらせてくれよ、ありさ?」

「サボテン」