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月夜の留守番電話

外国旅行記と小説。

ROLL

「Welcome to the Jungle」真紅の蝶ネクタイを締めたレオパードが言った。

「Welcome to the Jungle」続いて、前衛的なステッキを携えたアナコンダが言った。

「Welcome to the Jungle」最後に、遠慮がちなチンパンジーが両手をポケットに突っ込みながら言った。

「どこかズレている気がする」僕はそう思いながら、でもそれは見る角度の問題かもしれないと思い直し、代わりに「ここは火星ではないのかな」と尋ねた。前に立つ3匹、あるいは3人の誰でもいいから、とにかく答えてくれればそれでかった。

「I don't think so」すかさずレオパードが答えた。この3匹、あるいは3人の中では彼が主導権を握っているのかと思ったが、レオパードが答えた瞬間、他の2匹あるいは2人が恨めしそうに彼を見ていたので、必ずしもそういうわけではなさそうだった。答えた者順なのかもしれない。

「I don't think so」アナコンダが続いた。「I don't think so」最後にチンパンジー。チンパンジーはいつも遅れる。彼がこの3人(ということにしよう、便宜上)の中で主導権を握るのは、かなり難しいかもしれない。

「困ったな。僕はJAXAに勤めていて、3年後に始まる全日本火星開拓プロジェクトのヤマイモ栽培部門長なんだよ。プロジェクトにとりかかる前に、火星の土壌がヤマイモを育てるのに本当に適しているか、最終確認をしなくちゃならないのに」僕は日本語で、ゆっくりはっきり言い、大げさに困った顔を作って見せた。レオパードは、ポケットからスペアミントのガムを取り出し、まず僕に勧め(僕は断った。スペアミントのガムを噛むとおなかがユルくなるのだ)、それから自分でゆっくりとガムの包みを開けて口に含んだ。僕たちの間に、スペアミントの香りが広がる。

「若そうだね。30過ぎぐらいかな。いろいろあるのはわかるけどさ、自信持って、気楽にいきなよ」とレオパードは僕の肩をポンと叩いた。

少なくともここは火星ではない。