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月夜の留守番電話

外国旅行記と小説。

THE DAY

「明日地球が終わるとしたら?」卒業文集にありがちな質問。みんなは、持っているお金を全部使って遊ぶとか、おいしいものをいっぱい食べるとか、むしろ現実離れしたことを書いていた。明日地球が終わるという日に、誰があなたのために遊ばせてくれるのだろう。料理を作ってくれるのだろう。

そういう自分は、なんて書いたんだっけ。

 

明日で地球が終わるというのに、街は案外静かだった。人気のない街からは、カラスの鳴き声と、風に舞うビニール袋のカサカサという音しか聞こえない。みんな家に閉じこもって、思い思いの時間を過ごしているのだろう。最後まで日本は、称えられるべき平和を保ち続けた。

青天の霹靂で、地球に向かってまっすぐやって来る隕石が発見されたのは、昨日のことだ。その発見が伝えられてまもなく、隕石の接近による電磁波の歪みの影響で、ほとんどのメディアは機能しなくなった。今は、英語とアラビア語とロシア語のラジオの一部のチャンネルしか聞くことができない。つまり、僕にも彼女にも、情報を仕入れる手段がないということだ。

「隕石衝突の二日前にならないと発見できないなんて、NASAも大したことないのね」と彼女は言った。一理ある、と僕は思った。人間の天体観測技術なんて、たかが知れていたのだ。それがこんな実際的な形で証明された。しかし、人間が宇宙を把握するという考え自体が間違っていたのかもしれず、その点では今回の件だって、仕方ないことなのだ。

「地球最後の日に、好きな人といられた人間は今までいなかっただろうね」

「その点では、私たちは幸せね」

僕たちは窓越しに、一際強い輝きを見せながらこちらに接近してくる隕石を見つめていた。その輝きは、だんだんと耐え難くなるほどまぶしくなる。

「まぶしい」

「でもきれいだわ」

もうすぐ、目も開けていられなくなるだろう。だから僕は、彼女の手を握ったまま言った。

 

君のほうが、まぶしくて綺麗だよ。と言った。